福島原発汚染水放流は六ケ所再処理工場のためだった

 2023年8月24日、日本政府と東京電力は、福島第一原発で発生した放射能汚染水の海洋投棄を、国民はもちろん世界各国の抗議を無視して強行しました。日本政府がなぜここまで「汚染水放流」にこだわるのか、そのワケを、原子力問題に詳しい工学博士の小出裕章氏がわかりやすく説明しています。今年1月21日、福島県三春町で行われた講演「汚染水はなぜ流してはならないか」から書き起こしたものです。ごらんください。

https://www.youtube.com/watch?v=rrXxlQuR8io (該当か所は1時間17分ごろから)

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 原子力を進めようとしている人たちは海に流す以外の選択がないのです。じつは。なぜかというと、六ケ所再処理工場というものをなんとしても動かしたいからです。福島の事故で溶け落ちた燃料は250トンでした(トリチウムの量は約3・4ベタベクレル)。そこに含まれているトリチウムの一部が大気中に出て、一部がタンクに貯められている、そういう状態です。
 でも、もし福島の事故がなければどうなったかといえば、燃料は六ヶ所再処理工場に送られて、再処理をしてプルトニウムを取り出すという計画になっていた。再処理工場でもトリチウムを捕まえるということはできませんので、再処理工場でもトリチウムはぜんぶ海に流す、そういうことになっていました。六ケ所再処理工場は1年間に800トンの使用済み燃料を処理します。その中に入っているトリチウムはぜんぶ六ケ所村で海に流すという計画だったんです。福島の事故で溶け落ちた燃料は250トン、六ケ所再処理工場は1年間に800トン(トリチウムの量は約18ベタベクレル)です。そのなかに含まれるトリチウムはぜんぶ海に流す。それでも安全だといって国は六ヶ所再処理工場にお墨付きを与えたんです。なんとしてもそれを動かしたい。
 もし、福島のトリチウムを海に流してはいけないということになれば六ケ所村再処理工場を動かすことができません。プルトニウムを取り出すこともできなくなってしまい、日本の原子力の根幹が崩壊してしまう。だから、福島の漁民がどれほど反対しようが、世界のあちこちの国がどんなに抗議しようとも、日本というこの国は放射能汚染水を海に流す。それ以外の選択はないんです。もちろん私はそんなことがいいと言っているわけではありませんが、国にとってはそれしか選択肢がない。

 福島の汚染水の話は福島のこととはちがうんです。日本の原子力開発の根源にからんだ話であって、たいへん重要な闘いがいま行われている。

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 福島の事故がなければ、福島第一原発の使用済み核燃料は青森県六ケ所村にある再処理工場に送られ、再処理されて原爆の材料となるプルトニウムが取り出され、廃液のトリチウムを海に流す計画だった。年間800トンの使用済み燃料を再処理して、トリチウムを放流しても安全だという計画だった。これを日本政府はいまも放棄していない。今回の放流強行は「再処理」強行のためだというのです。

 きわめて貴重な指摘で、もっと大きく受け止められて然るべきでしょう。 

 なお、海洋放流強行翌日の25日、六ケ所村ウラン濃縮工場が6年ぶりに再開したと報じられています。

 誤りを直視せず、誤りをごまかすことに力を注ぐ。周囲もそれを受け入れる――かつてこの社会はそうやって破滅しましたが、いまもその破滅の論理から抜け出ることができていないように思います。プルトニウムがそれほどほしいということは、核武装を夢見ているということでしょうが、軍事戦略的にはとっくに時代遅れになった戦艦大和の建造を強行した発想に通じるものがあります。

「誤りを直視せず、誤りをごまかすことに力を注ぐ。周囲もそれを受け入れる――」という現象は原子力問題に限った話ではなく、身近にも思い当たる現象があります。大内裕和武蔵大教授の研究不正隠蔽もそのひとつですね。

1件のコメント

  1. 恥ずかしながら、この事実を知りませんでした。
    記者クラブのマスコミは、何故、この
    事実を発表せず 、国の筋書き通りの
    ニュースのみを流し、国民を誘導させてます。
    溶け落ちたデブリは海に一部?流れているということも聞きましたが、事実でしょうか。

    この件とは違いますが、おききしたい件、(十年前以上になりますが)
    移民、難民問題で週刊金曜日掲載の件です。こちらで問い合わせでいいでしょうか。
    入管法は殆ど前回廃案のまま政府案
    と同様の骨格で提出され、可決してしまいましたが、施行まで時間ないにしてもこのまま成立は止めたいのです。
    記事を途中まで読ませていただきましたが、いくつか知りたいです。
    ご連絡してもよろしいでしょうか。
    随分前のこととはいえ、これが一部の人の周知で終わるのは残念だと思います。ご検討頂けたら、幸いです

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