情報公開条例にもとづいて高知県選管に選挙運動費用収支報告書の開示を求めたところ、出納責任者の印影を非開示にした問題で、非開示の取り消しを求めた審査請求に対し、審査庁(高知県選管)は5月16日、非開示処分を取り消し、開示するとする内容の裁決を行った。
2020年12月8日、筆者は中谷元衆議院議員の選挙運動費用収支報告書の写しを入手したいと考えて、高知県選管に対して情報公開請求した。報告書は、閲覧するだけであれば公選法の規定でできる。公選法には写しを交付する規定がない。したがって、便宜上条例を使う。それが一般的なやり方だ。
当然、非開示部分はいっさいない状態で開示されるものと予想していた。ところが、同月23日付で高知県選管は印影を非開示にする部分開示処分を行った。理由は、高知県情報公開条例第6条第1項第5号。すなわち「開示することにより、人の生命、身体、財産等の保護に支障を生ずるおそれのある情報」だというのだ。
公選法で閲覧できる情報であるのに情報公開条例では開示できないというのは矛盾している。あきれて口頭で抗議したが、あらためようとしない。そこで審査請求を申したてた。2021年1月のことであった。さすがに審査請求をすればすぐに改めると思ったが、この予想もはずれた。
「開示すべき」であるとの審査会(諮問機関)の答申が出たのが2年後のことし2月、裁決までにはさらに3か月を要した。結局丸2年と4か月を経て、ようやく印影非開示が誤りであることが公式に確定した。だが非開示処分の取り消しはまだなされていない。
印影非開示の誤りは筆者から指摘された時点ですぐに気づきそうなものである。それを延々と放置し先送りにした。高知県選管の行政事務の無責任さ、効率の悪さを浮き彫りにした事件である。
付言すれば、裁決書の内容のひどさにあきれる。理由欄にはこう書いている。
本件審査請求に関する審査庁の判断は、答申における「第5 審査会の判断」と同様である。
答申の記述を引用すらしていない。むろん、添付しているわけでもない。裁決書だけをみれば何のことか意味不明である。答申は、選管(審査庁)の依頼に対して高知県公文書開示審査会が行った意見である。この意見を受けて選管は裁決(裁判の判決にあたる)を行い、審査請求人に通知する。答申書と裁決書は宛先がちがう。つまり、答申は審査会が選管宛に作成した文書であるのに対して、裁決は選管が請求人に対して作成した文書である。その審査請求人宛ての通知である裁決書の内容に「理由は答申の通りです」はやはり違和感がある。答申のとおりであれば、「理由は答申とおりであるからこれを引用する」として、答申の記載を転載すべきではないのだろうか。

