情報公開手数料の送金方法を「現金」「為替」に固執する神奈川県に異議あり

 情報公開制度が戦後の日本社会が得た貴重な権利であることはいうまでもない。公文書は皆のものであり、原則すべて開示しなければならない。何人にも知る権利がある。公正な行政運営には情報公開が欠かせない。

 この理念を実現するための法律であり、条例である。

 とても大事な制度であり、守らなければならないと思いながら、筆者が長年取り組んでいる課題のひとつが手数料の送金方法問題である。情報公開法にもとづく国の制度の場合は収入印紙で払う仕組みなので送金手数料はさほどかからない(郵送料はかかる。請求時に文書ファイル1件300〜200円を要する問題は残る)。

 問題は地方自治体の場合だ。納入通知書や納付書をつかえば送金費用なしで指定金融機関から払える。それにもかかわらず、現金や郵便為替、定額小為替で払うよう求める自治体が少なくない。現金書留は480円+郵送料(1万円以内)。普通為替は550円(送金額5万円未満)と郵送料、定額小為替は券面1枚ごとに200円の手数料と郵送料がかかる。

 仮に250円を送ろうとすると、現金書留なら480円+94円+21円(封筒代)=595円。普通為替は、550円+84円=634円(簡易書留は550円+350円=900円)、定額小為替なら200円✕2+84円=484円(簡易書留は400円+350円=750円)かかる。

 不経済きわまりないだけでなく、こうした送金方法の強要は法令に違反しているのではないかと疑う余地がある。じつは地方自治法は歳入方法は原則納入通知によると定めている(231条同施行令154条)。現金納付はそうすることが合理的である場合にのみ例外的に認めているやり方なのだ。

 納入通知書による納付が原則なのだから、そのほうが便利である場合は納入通知書払いを選択できるはずだ。筆者はそう考えて、さまざまな自治体(当道府県)と交渉して納入通知書払いを実現させてきた。かつては現金払いにこだわる自治体が多かったが、このささやかな「納入通知書払い運動」によって一定の改善がみられた。現在は、おそらく47都道府県のうち半数くらいは納入通知書が可能となっているはずだ(表向き現金払いを求めていながら、要求すれば納入通知を出すところもある)。

 首都圏では、東京都、埼玉県、千葉県は、納入通知書を出している一方で、神奈川県が現金に固執している。これを改善させるべく、ここ3年ほど神奈川県情報公開広聴課と交渉を続けている。3年前、「検討する」という回答をいったんは得た。ところが現在にいたるまで前進はない。財務会計規則など法令上の支障がないことも確認した。県は他の自治体の状況を調査して、諸問題の解決方法があることも十分理解している。その上で、あえて情報公開手数料は「現金または為替」でしか受け取らないという選択肢をとっている。意味不明で手前勝手な判断を情報公開制度の利用者に押し付けている。

 先日も、100円の手数料を、現金書留または為替で送金せよ、ちょうどの額でなければ受け取らない、ちょうどでなければ請求人の負担で送り返すことがある、普通郵便なら郵便事故があっても責任はとらない――など、不快感を禁じ得ない文面が神奈川県から送られてきた。

 神奈川県はなぜこれほど頑なに納入通知書の発行を拒むのか。情報公開制度を使いにくくする意図があるのではないかと疑いたくなる。現金払いの押し付けは裁量権の濫用にあたるのではないかと筆者は思う。一方の県は「問題はない」と言っている。もはや国賠訴訟で決着をつけるしかないのかもしれない。

2件のコメント

  1. 凄いことに着眼点を置かれていますね。私も気が付きませんでした。
    大きな事件ばかりに気を取られがちですが、三宅さんのご指摘の情報公開の手数料の支払いについては大切な問題ですね。ありがとうございます。

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