過ちを直視せず「黒を白に塗り替える」ことに膨大なエネルギーを使う社会

 5月20日午前11時から東京地裁612号法廷で、奨学金問題対策全国会議「入会拒否」事件の口頭弁論が開かれる。

 2019年7月、私は奨学金問題対策全国会議という任意団体に加入を申し込んだ。2013年に設立された団体で、設立当時、私は入会していたがその後退会していた。したがって再入会ということになる。この再入会申し込みを全国会議は拒絶した。理由はこうだ。

 ――再入会を認めると「一括請求(日本学生支援機構による違法性が疑われる貸し剥がし)」の問題について強く主張することが予想され、それによって会の活動に支障が生じる――(趣旨)

 まさか入会を拒絶されるなどとは予想だにしなかった。全国会議が入会希望を拒否した例はかつてなかった。

 この入会拒絶が思想差別などにあたり不法行為を構成するとして、私は全国会議とその代表者である大内裕和氏を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。

 裁判は終盤にさしかかっており、前回の口頭弁論で裁判官が大内氏の本人尋問を採用したい考えを明らかにした。被告側は、大内氏の尋問は不要だと強く述べた。採否決定は保留になり、一度主張を交わすことになった。

 私は、入会拒否の手続きがデタラメであることや「一括請求」を理由とした拒否が不合理であること、また、大内教授が私の入会を拒否する動機は「一括請求」よりも自身の「盗用問題」の発覚をおそれたと考えるのが自然である――といった主張を展開し、その立証には大内氏の尋問が不可欠であると述べた。これに対し、被告らから反論の書面が先日届いた。
 
 いわく、原告(筆者)が尋問で主に聞くのは盗用疑惑であると予想されるが、それは本件とは関係がない、また著作権侵害でも研究不正にもあたらない、などとして、大内氏の尋問は不要である―――。

 20日の口頭弁論で、裁判官は双方の言い分を踏まえて大内氏尋問の採否が決定されるだろうと私は予想している。

 全国会議代表の大内教授が私の著作を盗用している事実に筆者が気づいたのは、入会拒否事件から1年後の2020年7月のことだった。著作権侵害を訴えて提訴したところ、著作権法上の著作物ではないという理由で敗訴した。これは意外であった。あわせて、研究不正(盗用)だとして、当時の勤務先である中京大とその後の移籍先である武蔵大に告発し、それぞれ調査が行われたが、いずれも不正ではないとの結論だった。判決も研究不正調査の結果も、私からみれば到底納得しがたい内容であった。とくに看過できないのは、大内教授は、私の著作を「読んでいない」と主張した部分だ。つまり類似した文章を発表したのは偶然だという荒唐無稽な主張をし、大学の調査はその非現実的で矛盾に満ちた言い分を鵜呑みにして判断の基礎にした。
 
 大内尋問の回避にやっきとなる被告代理人の姿勢をみて不思議に思うのは、いみじくも大内氏は全国会議の代表なのだから、堂々と尋問に応じて、三宅の入会を拒否したことには問題がなかったのだと、なぜ証言させないのかということだ。もしかしたら「殿」を守る家来の心境なのだろうか。そうだとすれば、いったい何から守ろうというのか。


 過ちを直視せず「黒を白に塗り替える」ことに膨大なエネルギーを使うことを当然とする文化が社会の隅々まで染み渡り、社会を蝕んでいる。そうした現実をあらためて思い知らされる。

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