「武蔵大のいう”孫引き”という意味がよくわからない」
大内裕和武蔵大教授の盗用疑惑を調査した同大調査委員会の結論に関して、読者からそんな疑問をいただいた。たしかにそうだ。常識的に考えると「孫引き」=引用の引用=をしたくなる動機は、引用元の原典を探すのが面倒だからということだろう。すくなくとも原典がなんであるかは知っているのが前提だ。ところが大内氏の場合は「原典」がなにかを、おそらくは大内氏自身が知らない。日本学生支援機構の公表データ(債権回収額など)を引用したとされる私自身がそれを知らないのだから当然である。
もとをただせば、質問主意書うんぬんの大内氏の見え透いた詭弁を調査委員会が一蹴しなかったことが混乱のはじまりだ。三宅の記事にある回収データと同じ回収データが大内氏の記述にもみられる点について、大内氏は、三宅の記述を参考にしたのではない、質問主意書を参考にしたのだ、ただし質問主意書は自分が作成に関与しており三宅記述を参考にした――という理屈をこねた。三宅記述の存在を知っているのだから(共著だから当然である)、三宅記述を参考にしていないなどというのは屁理屈だ。常識的に通用するはずがないが、武蔵大の調査委はこれをありえる話だとして容認した。
そしてなにがなんでも孫引きにしようと、実在しない「公表データ」をでっちあげたとみられる。
大内氏の説明の一貫性のなさは、回収データをめぐる説明の一貫性のなさをみるだけで明らかだ。逃げ得を許してはならない。あらためてそう思う。重ね重ね読者各位のご支援を乞う次第である。
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・2021年3月 大内氏代理人から三宅代理人へ解決案提示。解決金支払い、謝罪、訂正する用意がある。ただし三宅側は大内を批判した記事を削除せよとの内容(決裂して著作権侵害訴訟に移行=著作物性がないとして三宅敗訴)。
・2021年6月 著作権侵害訴訟での大内氏答弁。三宅記述と同じ回収データは、当時三宅が明らかにしたと認めている(つまり公表されていない)。
・2023年1月 武蔵大調査委に提出した大内氏の弁明書。三宅記述と同一の回収データが大内記述にみられる理由について、質問主意書を参考にした。三宅記述は参考にしていないと弁明。回収データが日本学生支援機構によって公表されているとの弁明はない。
・2023年7月 武蔵大学調査報告。三宅記述中の回収データは日本学生支援機構の公表データの引用であるとの事実認定をしている。
・2024年5月 武蔵大学準備書面。「訴外大内は「質問主意書の作成に関わった際に、原告の著作物に引用されていた独立行政法人日本学生支援機構の公表している数字を(原典に直接当たらずに)参照した」と説明している」
・2024年12月 議事録の一部開示。調査委員「JASSO※が公表している随意契約一覧をたどれば金額はでるのかもしれませんが」。大内氏「公開されているものなので…」※随意契約一覧表と思われる