武蔵大が研究不正調査で「不正」の疑い、さらに濃厚に

 大内裕和・武蔵大教授の盗用問題で、調査を行った同大の調査委員会が事実をねじまげて「盗用ではない」との結論を強引に導いた疑いを一層濃厚にする証拠が明らかになった。私が同大相手に起こしている訴訟のなかで、このほど調査委員会が大内氏に対して行った聞き取り調査の記録が開示された。

 すべて日本学生支援機構の公表データをもとにして独自に調査して書いたのであり、三宅の記述を写したのではない、文章の類似は偶然である――というのが大内氏の言い分だ。公表データのない部分(債権回収額等のデータ。下記写真の黄色マーカー部分)もあるのだが、これも、山本太郎参議院議員(当時)の質問主意書(4項)を参考にしたのであって、三宅の記述を参考にしたのではない(つまり公表データを参考にした)というあきれた主張を展開している。この質問主意書については、ほかでもない私の記述を参考にして書いたことを自分で認めている。嘘に嘘を重ねて議論をこんがらがせて煙に巻こうとしているようにしか見えない。見苦しい限りである。

上『日本の奨学金はこれでいいのか』第2章(2013年あけび書房。三宅著:大内氏との共著)

下『奨学金が日本を滅ぼす』(2017年朝日新書。大内氏著)

 問題は、武蔵大学の調査委員会の不誠実な調査姿勢だ。なかでも次の事実認定は常軌を逸している。

「被告発者は山本太郎議員の国会答弁における「奨学金に関する質問主意書」の執筆を行っていたが、その際に三宅氏の著作物を参考にしたことを認める一方、自身の書籍の執筆にあたっては告発者の著作物ではなく自身が執筆に関わった質問主意書を参考にしたと説明している。ただし、被告発者は参考にした内容は独立行政法人日本学生支援機構により公表されている数字のみと説明しており、今回のヒアリングで判明した孫引き行為を盗用とみなすのは難しいと判断した」(調査報告書)

 私は自分の記述のなかで「日本学生支援機構により公表されている数字」を引用した覚えはない。機構に取材を行い、そこから得たデータを集計した上で記載した。それがいつの間にか「引用」にされてしまい、「孫引き」の根拠になってしまっている。

 訴訟でこの点を追及したところ、武蔵大は次のように反論を行った。

 (大内氏が)「2013年に質問主意書の作成に関わった際に、原告(三宅)の著作物に引用されていた日本学生支援機構(JASSO)の公表している数字を(原典に直接当たらずに)参照した。」との説明を行い、それが信用できるとして「孫引きではあるが盗用ではない」と結論づけた。

 (武蔵大学の準備書面より)

 「2013年に質問主意書の作成に関わった際に、原告(三宅)の著作物に引用されていた日本学生支援機構(JASSO)の公表している数字を(原典に直接当たらずに)参照した。」との発言を大内氏がしたという。本当にそんなことを言ったのか、私はにわかに信じることができない。というのも、かつて別の訴訟で、大内氏は問題の数字(回収データ)について、私の調査で明らかになったことを認めているからだ。

 

 

 大内教授の上記発言が実在することを裏づける証拠を開示せよ、また「原典」(JASSOの公表データ)を調査委員会は確認したのかを明らかにせよ――裁判のなかで私は武蔵大に対して、再三釈明を求めた。これに対して、被告武蔵大はまず、調査委員会が「原典」を確認してないこと、および裁判になってからも武蔵大は「原典」を確認していないことを認めた。そして、昨年12月、問題の大内発言に関連するとされる調査記録が開示された。

 結果は案の定である。開示された記録(下記の写真)には、大内氏が、三宅記述から数字を参考にして質問主意書を作成したこと、および、その数字が正しいかどうかについて日本学生支援機構に確認しなかった旨を述べているだけで、「2013年に質問主意書の作成に関わった際に、原告(三宅)の著作物に引用されていた日本学生支援機構(JASSO)の公表している数字を(原典に直接当たらずに)参照した」なる発言は記録されていない。つまり実在しない。

 調査記録にない被調査者の発言が調査報告書や裁判の書面には登場する。もはや調査の体をなしていない。

 

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