情報公開制度は戦後の日本社会が獲得した重要な権利であることに異論はないだろう。地方自治体や議会から先行してはじまり、その後を追って国の行政機関や独立行政法人を対象とした情報公開法・独法情報公開法が制定された。知る権利を保証し、公正な行政運営・議会運営を実現するという目的をかかげている。しかしながら、なお制度にはいくつもの改善すべて点がある。
裁判所や国会を対象とした情報公開法がないことや、国・独法の行政機関に対する情報公開に一件(文書件数)300円の手数料を課している問題はそのひとつだ。裁判所の情報公開制度は請求者の権利に基づいたものではなく、裁判所の恩恵という格好になっている。情報公開法や条例に基づく行政処分の適否を審査する裁判所がこの体たらくでいいはずがないが、改善される気配はとぼしい。
私が長年改善にとりくんできたのが、地方自治体の情報公開で開示文書の写しの交付を受ける際の手数料の送金方法だ。最近ではかなり改善されてきたが、現金書留や郵便為替で送れというところがいまだにある。首都圏では神奈川県がそうだ。文書の枚数にかかわらずCDなら1枚80円、DVDなら160円という費用のやすさは高く評価できる。しかし、問題は遠隔地から送金する方法を現金書留か郵便為替(小為替)に限定している点だ。送金費用が611円(郵便代110円+書留代480円+封筒代21円)もかかる。納入通知書を発行してもよりの指定金融機関から払えば利用者の負担はない。東京都、埼玉県、千葉県はいずれも納入通知書で送金可能だ。だが、なぜか神奈川だけは現金にこだわっている。
ただし電子申請の場合はクレジットカードなどが使えるが、電子申請自体の設計に使いにくさや情報管理に不安がある(民間業者を介している)ことから、従来の申請用紙による申請を選ぶ理由はある。
こうした問題をときおり書いていたところ宮城県の読者から連絡をいただいた。100円未満の少額料金を払うのに現金か為替で送れといわれ、困惑しているという。たしか宮城県は納入通知書での送金ができたはずだと疑問に思い、県に問い合わせたところ、あきれた事実が判明した。たしかに従来は納入通知書を使っていたが、その後止めたのだという。納入通知をしたものの入金がないときの処理に困ることがあり運用を変えたらしい。納得しかねる説明だ。
苦情を言うと、見直しを検討したいが時間がかかるとの返答であった。
情報公開制度をできればあまり使ってほしくないというのが本音で、「現金問題」に対する批判がさほど強くないのをいいことに、どさくさまぎれに現金書留を復活させたのではないかと推察する。権力は常に監視していないとたちまち、あるべき権利を奪ってしまう。さびついて壊れてしまうのだとあらためて思う。
動きがあり次第ご報告したい。