読者のみなさんこんにちは。きたる6月3日土曜日午後6時から、阿佐ヶ谷北オーシャンハウスで近著「自衛隊の自衛隊」をテーマにお話をいたします。ご興味のある方、ぜひお越しください。詳細はチラシをご覧ください。


読者のみなさんこんにちは。きたる6月3日土曜日午後6時から、阿佐ヶ谷北オーシャンハウスで近著「自衛隊の自衛隊」をテーマにお話をいたします。ご興味のある方、ぜひお越しください。詳細はチラシをご覧ください。
私的団体には憲法21条が保障する結社の自由がある。その内部で起きた差別行為、いじめに類する行為について、不法行為などの違法を問うことができるのか。私はよくわからなかった。
知り合いの弁護士に相談したり、インターネットで検索していくと、ある判例に行き当たった。性転換手術をしたことを理由にゴルフクラブ入会を拒否した行為が不法行為にあたるとして損害賠償を認めた事件である。一審静岡地裁浜松支部(H24ワ627)、二審東京高裁(H26ネ5258)ともに一審原告の訴えを認めた。
そこで示された判断の枠組みはこうだ。
====
憲法における国民の権利に関する規定及び国際人権規約は,私人相互の関係を直接規律することを予定するものではなく、私人間における権利や利害の調整は,原則として私的自治に委ねられるが、私人の行為により個人の基本的な自由や平等に関する具体的な侵害又はそのおそれがあり、その態様、程度が憲法の規定等の趣旨に照らして社会的に許容し得る限度を超えるときは、民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、当該行為を無効としたり、このような形で、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護することにより、両者の適切な調整を図ることが可能となる。したがって、本件入会拒否及び本件承認拒否が、社会的に許容し得る限度を超えるときは、不法行為を構成するというべきである。(高裁判決より)
====
国家は私人間(しじんかん)に立ち入らないという原則はあるものの、権利侵害の程度などが憲法の趣旨に照らして社会的に許容し得る限度を超える」ときは違法となるという考えだ。この考えのもとで判決は、次のように判断している。
・当該ゴルフクラブが「閉鎖性を有する団体とは認められない」(ゴルフクラブへの入会要件が国籍を除いては存在せず、過去に入会を拒否した例がまれであった)
・性同一障害が本人の意思とは関わりなく罹患する疾患であり、クラブ側も認識すべきであった。
・看過できない損害がある。
――よって、ゴルフクラブへの入会拒否は憲法14条1項及び国際人権B規約26条の規定の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるものとして違法というべきである。
国籍を理由にゴルフ会員入会を拒否した津地裁四日市支部の事件もこれに似ている。しかし、同支部は違法性を認めなかった(現在大阪高裁に控訴中)。違いはどこにあるのか。私が四日市を訪ねて訴訟記録を調べた動機はそこにあった。
(つづく)