奨学金問題対策全国会議に、筆者は2013年3月(設立時)に入って2015年12月に自主的に退会し、2019年7月、再び入会したい旨申し込んだ。この一連の判断には私なりの一貫した理由がある。
従来取材をしてきたサラ金問題の延長に「奨学金ローン」問題があると考え、記事や著書を発表してきた。多重債務問題では取材対象であり、武富士裁判では共闘する関係でもあったクレサラ対協が、その活動として全国会議を設立した際、参加を促され加入したのは自然の流れであった。
全国会議の活動のなかで、私は一会員として「一括請求問題」について積極的な発言をした。認識不足があるのではないかとする批判的な意見も述べたが、民主的で建設的な活動をする上でごく当然のことだと考えた。
退会を考えたのは、全国会議は「一括請求問題」にもっと目を向けるべきだという発言を、一般の読者にわかる形でするためである。ジャーナリストを職業としている以上、言動の不一致がある場合、その点を批判される余地がある。共著『日本の奨学金はこれでいいのか!』第2章で、私は「一括請求」問題を書いて告発した。同書は全国会議の編集で、私もその一員である。本を通じて入会も呼びかけている。その全国会議が「一括請求問題」に沈黙していることについて私は矛盾を私的され、説明を求められても仕方がない立場にあった。
そこで退会したが、批判すべきは批判しながら、ともに問題にとりくみたいとの意思を明確に伝えている。関係者が多数加入するメーリングリストに次の投稿をしている。
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私の選択は、愛想をつかしたとかそういう類ではないことをご理解ください。⼀括請求の問題がなかなか「対策会議」で取り上げていただけないので(努⼒されていることは承知しています)、これ以上対策会議にいたばあい、「なぜ対策会議は⼀括問題を取り上げないのか」と私が指摘された際、いちいち⾔い訳をしなくてはなりません。いっそ組織を離れたほうが気楽に発⾔できるし、批判すべきが批判できる、そのほうが事態の改善にはよいだろうと判断したわけです。
東京新聞が⼤きな記事にしているのに、このタイミングでなぜ⼀括請求の問題が取り上げられないのか。やはりオピニオンリーダーである対策会議から「⼀括はおかしいぞ」というメッセージが出てこなかったからです。とても残念です。これは意⾒です。
今後はこうした意⾒を外に向かって発信することが可能になります。だからといって対策会議が嫌いになって絶交したとか、そんなのではないのです。
対策会議をやめたことで、いつまでたっても⼀括請求の問題への取り組みが⽢いようでしたら、ぼろくそに書かなければならない⽇がきますよ⸺というメッセージを送ったつもりでもあります。借り⼿の⾝になったら当然です。返せないヤツは⽶軍の⼆軍として使ってやろうという話まで公然とでてきているのです。
学⽣に何百万円も貸せるのは与信不要の⽇の丸ローンだけです。普通のローンではないからですが、ではなぜ普通のローンじゃないのに⼀括請求するのか。すぐに中⽌しろ! と⼤声を上げることが何よりも必要だし効果的だとも思うのですよ。⼀括請求がなくなれば、何百万円借りていても返還期⽇の最終⽇がくるまでには時間があるわけで、それほど慌てることはありません。
ということで、サラ⾦の「グレーゾーン」問題のときのように「⼀括繰り上げ撲滅運動」をぜひ⼒をあわせてやろうではありませんか。
考えや⽴場のちがいを互いに認めたうえで共通した理念のもとに結集してこそ⼒になるのだと思います。
三宅
2019年7月に全国会議への再入会を申し出たのは、全国会議が「一括請求」について問題意識をもっていることを確認したためである。むしろ退会を続けるほうが矛盾した行動で、会に戻るのは当然だと考えたのである。
(つづく)