条例や法律の適用をうけない法人の情報公開をどう進めるかは大きな課題である。神奈川県の外郭団体・神奈川県道路公社もそのひとつだが、公社の内部規程に基づいて情報公開請求しようとして重要な問題に気づいた。肝心の規程が公表されていない。改善するよう申し入れていたところ、きょう13日「ご指摘のとおり、規程をホームページで公表することにしました」との連絡があった。
すみやかな対応を評価したい。
情報公開規程の公開(請求希望者にも提供しない)を拒否する中京大学よりははるかにまっとうである。
条例や法律の適用をうけない法人の情報公開をどう進めるかは大きな課題である。神奈川県の外郭団体・神奈川県道路公社もそのひとつだが、公社の内部規程に基づいて情報公開請求しようとして重要な問題に気づいた。肝心の規程が公表されていない。改善するよう申し入れていたところ、きょう13日「ご指摘のとおり、規程をホームページで公表することにしました」との連絡があった。
すみやかな対応を評価したい。
情報公開規程の公開(請求希望者にも提供しない)を拒否する中京大学よりははるかにまっとうである。
杉並区の情報公開手続きで、開示したとしながら文書の一部を白くぬったり、不服を訴えた審査請求を4年以上も放置したことの違法性をとうた訴訟の控訴審判決が、11日東京高裁であり、白塗りは非開示処分ではない違法な加工だとの一審判決にたいして、違法な非開示処分にあたる可能性もあるとする判断を示した。
その上で、国賠法に基づいて金銭で賠償するほどの損害はないとして原告の請求を棄却した。
杉並区は、情報公開請求の対象文書の一部を「黒塗り」ならぬ「白塗り」にして、条例にもとづく非開示処分ではない「犯罪防止措置」だなどと説明する独自の条例解釈を長年にわたって行ってきた。白塗りであろうが黒塗りであろうが非開示にはかわりないので、「白塗りは非開示処分である」ことを確認することを争点のひとつとする訴訟をこれまでに2件起こした。うち1件は「非開示処分である」と認定、もうひとつは「非開示処分ではない」との事実認定をした。今回の控訴審判決は後者である。
「控訴人が主張するように、本件加工をもって一部不公開処分と解したとしても…」との文言が追加された。その場合は条例にもとづく不開示理由の説明義務違反が生じるのだが、そのあたりは手抜きをしたと思われる。
ともあれ、杉並区において今後「白塗り」を繰り返させないひとつの歯止めになったことはまちがいない。また、ほかの自治体や政府機関、独法などの「白塗り」を抑止する効果もあるにちがいない。
御支援いただいた読者各位に厚くお礼申し上げる。
神奈川県警の元職員が再就職するための民間企業の「求人票」を全面黒塗りにしたことの違法性を問う訴訟が現在横浜地裁で進んでいる。5月30日に予定されている弁論準備手続にそなえて、原告の筆者はきょう、反論の書面を郵送した。この場を借りてご紹介したい。いたらない部分が多々あると思うので、御意見をいだだければ光栄である。
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令和3年(行ウ)第75号 情報公開非開示処分取消等請求事件
原告 三宅勝久
被告 神奈川県
2022年5月30日
横浜地方裁判所 第1民事部御中
準備書面2
原告 三宅勝久
被告の主張に対して以下反論する。
第1 対象文書の整理
本訴訟において原告が処分取消を求める対象文書を、以下のとおり「A文書」と「B文書」の2種類に分類した上で整理する。
A文書:地方公共団体が作成・提出した求人票(部署名・連絡先等を非開示にしたもの)
B文書:民間企業などの法人が作成した求人票(法人名などを非開示にしたもの)
(1)A文書
合計36枚
(内訳)
2016年度 5枚
2017年度 7枚
2018年度 7枚
2019年度 12枚
2020年度 5枚
(甲4−1、4−2)
(2)B文書
合計641枚
(内訳)
2016年度 93枚 (甲5−1、5−2)
2017年度 109枚 (甲6−1、6−2)
2018年度 194枚 (甲7−1、7−2)
2019年度 165枚 (甲8−1、8−2)
2020年度 80枚 (甲9−1、9−2)
第2 求釈明
対象文書を整理する過程で判明した不明点について、原告の主張・立証に必用であるので釈明を求める。
(1) A文書のうち「配置希望表(警察官)」の記載がある文書(甲4−1の27、28枚目)は、神奈川県知事部局への再就職(再雇用)を目的として被告神奈川県が作成したものか否か、文書の作成者および文書の意味を説明せよ。
(2) A文書(甲4−1)の32~34、36枚目の各文書に日付がないのはなぜか、理由を釈明せよ。また、甲13(横浜市が開示した求人票との対象表)の25~27、29の各頁における左右の文書は同一のものか、否か、説明せよ。
(3) 横浜市に対する情報公開請求により、横浜市教育委員会が作成した2020年11月6日付の求人票が開示された。しかしながら、本件開示請求ではこの文書は請求対象文書として特定されていない(甲13、30頁)。理由を説明せよ。
(4) B文書2019年度164枚目の文書(甲9−1・164頁、「令和2年1月28日」「259」の記載があるもの)に記載された「人事課記入欄」の意味を説明せよ。
第3 反論
(1)A文書について
A文書に分類した各文書は、地方公共団体である横浜市や大和市などが作成し、神奈川県に提出したものである(以下「本件各地方公共団体求人票」などという)。法人概要欄の非開示部分は、横浜市、大和市の部署名の一部である。これらの情報を非開示とした理由について、被告は、条例5条1号に規定する個人識別情報に該当する旨述べる。
(被告準備書面1・23頁最終行から数えて4行目〜24頁12行目)
しかしながら、この主張は失当である。以下理由を述べる。
(あ) 条例5条1号イに該当する
本件各地方公共団体求人票のうち横浜市が作成・保有しているものについて、原告は同市長宛に情報公開請求を行った。その結果、求人票に記載されたほぼすべての情報が開示された(甲13各頁右側の文書)。以上の事実から、本件各地方公共団体求人票の法人概要欄にかかる情報が、条例5条1号イの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当することは明らかである。
(い)条例5条1号ウに該当する
条例5条1号ウは、個人識別情報であっても「公務員等の職務の遂行に関する情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る情報」に該当する場合は開示すべきである旨定めている。この規定の趣旨について、被告作成の解説書は次のとおり説明している。
「公務員等の職務遂行の内容に係る情報」とは、公務員等が分掌する職務を遂行する場合におけるその情報(例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席及び発言、その他の事実行為に関する情報等)をいい、公務員等の情報であっても、人事管理上保有する、職員等の健康や休暇、身分取扱いに関する情報等は、公務員等の職務遂行の内容に係る情報には含まれない。
(甲10、16頁本文11〜16行目)
この解説を踏まえ、条例を自然に解釈すれば、地方公共団体作成による求人票に記載された部署名が条例5条ウの「公務員等の職務遂行の内容に係る情報」に該当することは明白である。
(2)B文書について
B文書に分類した各文書は、会社法人など国や地方公共団体、独立行政法人以外の法人が作成し、神奈川県に提出したものである。法人概要欄の非開示部分(以下「本件各法人情報」などという)は、企業などの法人名と所在地などの基本情報である。これらを非開示とした理由について、被告は、条例5条2号に規定する「当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報」に該当し、かつ同号ただし書きにも該当しない旨述べる。
(被告準備書面〈1〉16〜17頁)
しかしながらこの主張は失当である。以下理由を述べる。
被告作成の条例解説書は、5条2号の趣旨についてこう説明している
本号該当性の考え方
法人等又は事業を営む個人に関する情報で非公開とするものは、公開することにより当該法人等又は当該個人の「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」情報であり、これに該当する情報の典型的なものとしては、生産技術上又は販売上のノウハウに関する情報、信用上の正当な利益を害する情報がある。公開請求に係る情報が当該法人等又は当該個人の「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」情報に該当するかどうかは、当該情報の内容のみでなく、法人等又は事業を営む個人の性格、目的、事業活動における当該情報の位置付け等にも十分に留意しつつ、慎重に判断する必要がある。なお、この「害するおそれがある」かどうかの判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。
(甲10、20頁3〜14行目)
求人票記載の法人情報を公表することで、当該法人の▽人事管理に支障が生じる、▽外部の者から誤解が生じ社会的評価が下がる、▽同業他社との関係等で、労働者の待遇や業務体制に関し、競争上の地位その他正当な利益を害されるおそれがある――などという被告の説明は、いずれも漠然とした「おそれ」を述べているにすぎない。本件各法人情報が法的保護を必用とする具体的な事情は存在しない。
また、原告が警視庁と埼玉県警に対して本件の求人票に相当する文書の開示を情報公開請求したところ、どちらにおいても法人名をすべて開示した(甲11、甲12)。開示することによって、当該法人などの利益が損なわれたとする事実はない。公務員退職者の再就職先を開示するのは社会通念である。
以上のとおりであるから、本件各法人情報は条例5条2号に該当するとの被告の主張は失当である。
以上
横浜市の情報公開事務が、多数ある区や局から個別に「開示日程の調整」の書簡を続々と送るなど非効率かつ煩雑をきわめている問題で、「無意味で税金のムダなので中止せよ。必要ならメールで連絡せよ」を求めたにもかかわらず、先に送付してきた9通に加えてあらたに14通の書簡が区局から内容証明郵便などで届いた。
一方、肝腎の開示決定通知はごく一部(書簡を送ってきた23の部署のうち一か所=市民情報課)しか届いていない。
また、横浜市は46の区と局があり、最大で46通の書簡を予想していたが、財政局や中区のように同じ区や局から複数の書簡を送った例があった。このまま、配達証明の嵐が続けば、最終的に46通を超す可能性が出てきた。
情報公開事務の総合担当部署である市民情報課が全庁内の文書をとりまとめて通知と日程調整の連絡をすれば、経費も少なくてすみ事務の効率もよいはずだ。それをせずに文書の管理を各部署にまかせたままにしている。
”配達証明の嵐”は文書管理を事実上放棄しているに等しい横浜市の”お寒い”実態を浮き彫りにしている。
日程調整の書簡を送ってきた部署は以下のとおり(5月4日現在)。
・都市整備局総務課
・資源循環局総務課
・財政局財政部財源課
・財政局契約第1課管理係
・財政局公共施設・事業調整課
・医療局総務課
・経済局政策調整部総務課
・港北区総務課
・瀬谷区総務課
・建築局総務部総務課
・戸塚区総務課
・中区総務課
・中区地域振興課
・金沢区総務課
・会計室会計管理課
・保土ヶ谷区総務課
・中区保険年金課
・市民局総務課(開示決定通知書=送付ずみ)
・こども青少年局総務課
・道路局総務課
・財政局管財課
・港湾局総務課
筆者はこれらの部署と市民情報課に対して、次の内容のメールを送った。
実施機関横浜市長さま 1月18日付情報公開請求にかかる開示手続きに関して、多数の区部局から日程調整の書簡が届いていますが、開示決定通知が一部しかとどいておらず、また文書量も不明である現時点では日程の調整は不可能です。 今後さらに同様の書簡を送られる予定がありましたら、税金のムダですのでおやめいただきますようお願いします。 書簡をみると、すでに開示決定がなされているようですので、すみやかに通知書を送っていただきますようお願いします。その際、文書量もあわぜてお知らせください。 郵便料金を節約するために極力まとめて郵送するようにお願いします。 なお、5月12日から28日までは東京を不在にする予定ですので受け取ることができません。11日必着でお願いします。それ以降の到着が見込まれるばあいは投函前にメールにてご連絡ください。 決定の全容と文書量を確認することができた時点で、閲覧の日程を調整したいと思います。 なお、本庁舎にてまとめて作業をしたいと思います。 三宅勝久
筆者は現在4件の民事裁判を当事者として争っている。
1 大内裕和武蔵大教授に対する著作権侵害訴訟(控訴審)
2 杉並区に対する国家賠償請求訴訟(控訴審。情報公開請求で文書を白塗りにしたことの違法性、審査請求を4年放置したことの違法性)
3 板橋区に対する国家賠償請求訴訟(1審。情報公開請求で選挙運動費用収支報告書の一部を非開示にしたことの違法性)
4 神奈川県に対する情報公開非開示処分取消等請求訴訟(神奈川県警が元職員の再就職のために企業などから受け取った求人票の企業名を非開示にしたことの違法性)
この連休中は、「4」の事件の準備をする予定だ。5月30日に横浜地裁で弁論準備手続きが予定されている。
上に紹介した事件は、すべて筆者が原告となって本人訴訟で起こした(1は控訴審から代理人弁護士に委任)。いずれもジャーナリストとして取材をしているなかで問題に行き当たったことがきっかけだ。
気のせいかもしれないが、以前であれば記事や取材で問題を指摘しただけで是正されていたことが、いつの間にかそうならなくなった。当事者は開き直って横車を押すような言い訳を平気でやり、周囲は無関心か、見て見ぬふりをする。そんな社会に変わってしまったように思う。
あきらめるのは面白くないから、やむを得ず裁判で決着をはかっている。上に紹介した程度の内容で、筆者ごときが身銭を切って裁判をやらざるを得ないこと自体、この社会のもつ自浄作用が劣化していることの現れかもしれない。