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印影不開示問題 情報公開

選挙運動費用報告書の印影は「全部開示が妥当」
高知県情報公開審査会答申

 選挙運動費用収支報告書の写しを入手するために高知県選管に情報公開請求したところ、「犯罪を誘発するおそれがある」などとして出納責任者の印影を黒塗りにし、これを不服として筆者が審査請求を行っている問題で、諮問機関の高知県公文書開示審査会は2月7日、「印影は開示すべきである」とする答申を行った。同選管は非開示処分を近く取り消すと思われる。

 印影を開示すると財産の侵害などの犯罪を誘発するおそれがあるなどと県選管は主張していたが、じつは、収支報告書の提出を受ける際、銀行印などを使わないよう要請していたことが判明、犯罪につながるおそれは小さく、開示することによって得られる利益のほうが大きいと審査会は判断した。

 これで、全国の地方自治体で選挙運動費用収支報告書の印影を非開示にしているのは東京都選管ただひとつとなった。都選管に対しても非開示取り消しを求める審査請求を行っているところである。

※関連記事は「印影不開示問題」で検索してください。

■答申

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印影不開示問題 情報公開

選挙運動費用収支報告書の「出納責任者印影非開示」
 続行は東京都と高知県のみ

 選挙運動費用収支報告書の情報公開請求に対して、出納責任者の印影を非開示とした板橋区選管の行為に対して、東京地裁は先日、「印影は非開示情報ではない」との判断をした。この印影問題については、すでに高松市と板橋区の情報公開に関する諮問機関が開示を妥当とする答申を出しており、印影非開示を是とする余地はもはやない。板橋区選管は、答申を受けて印影含めてすべて開示する処分変更を行った。

 決着のついた問題であるが、なおも頑強に非開示を撤回しない自治体がわずかにある。東京都選管と高知県選管だ。どちらも、印影非開示の取り消しを求めて審査請求を行い、諮問機関への諮問がなされている。結論はまだない。 東京都に手続きの進捗をたずねたところ、「情報公開審査会に係属している案件が多数あり、年内は無理」との回答があった。

 時間をかけて議論するような内容にはとても思えない。すべて開示するよう処分変更をすれば済む話である。現にそうしている自治体がいくつもある。東京都北区しかり、千代田区しかり。

 自分たちで判断できない。だれかに指示してもらうまで現状を放置するという考えなのだろうか。これでは仕事が停滞するのも無理はない。

 審査請求(簡易迅速に行政の不備に不服を申し立てる制度)の結果を待つより、あらためて開示請求を行い判断をさせるようが早いかもしれない。そう考えて、都選管と高知県選管に、前回知事選の選挙運動費用収支報告書(現職知事分)の開示を求める情報公開請求を行った。請求書に、判決文のURLと併せて次のように書き加えた。

 ※なお、貴選管では従来、出納責任者の印影を非開示とする運用をしておりますが、東京都板橋区選管による選挙運動費用収支報告書の印影非開示をめぐる国賠訴訟(令和3年ヮ26199号)で東京地裁は、印影は条例の非開示情報にはあたらないと判断しています。開示すべきであることは明白ですので、その点慎重にご判断ください。
●判決文はこちら
https://miyakekatuhisa.com/archives/2114

 

 

 

 

 

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情報公開 警視庁

警視庁が「処分書の幹部名黒塗り」を撤回か 荻窪署員連続空き巣事件

 警視庁荻窪書交通課の現職警察官による連続窃盗事件をめぐる上司らの処分・注意文書を警視総監宛に情報公開請求したところ、副署長ら幹部職員の氏名を不開示とする決定を行った。これを不服として黒塗りの取り消しを求める審査請求を今年2月に行ったところ、警視庁は昨日(14日)、黒塗り処分を撤回する旨決定したと筆者に連絡した。

https://www.mynewsjapan.com/reports/2619

 変更語の決定通知や対象文書がまだ届いていないため詳細はわからないが、少なくとも副署長の氏名は開示したのではないかと想像する。

 少し前なら、この程度の問題はメディアで騒ぎ、世論がそれに反応して、たちまち解決しただろう。署長副署長は名前を隠すどころか、カメラの前で謝罪することを余儀なくされであろう。

 主権者が油断すると、権利がどんどん侵害されてしまうということをあらためて痛感する。

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印影不開示問題 情報公開 政治資金 板橋区 行政腐敗

板橋区選管の「選挙運動費用収支報告書」黒塗りは違法
国賠請求訴訟判決

 選挙運動費用収支報告書の写しを入手する目的で板橋区選管に対して情報公開請求したところ、寄附者の氏名・住所(2週間後に開示)、出納責任者の印影(10か月後に開示)など多数か所を非開示にしたことの違法性を問う国賠訴訟で、東京地裁(村田一広裁判長)は9月14日、個人名などを非公開にした板橋区選管職員の行為が「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなくされた」誤ったものだとして、国家賠償請求法上違法であるとする判決を言い渡した。

 その上で、金銭で賠償するほどの損害は認められないとして、原告の請求は棄却した。

 また、出納責任者の印影については、犯罪誘発のおそれがあるとして非開示にしたことについて、公選法の規定で閲覧可能なことなどを理由に、「おそれ」は漠然としたものにすぎず、条例の非開示理由にあたらないと判断した。ただし、瑕疵(判断ミス)はあるものの、国賠法上違法とまでは言えないとした。

 実質的な勝訴判決といってもよい。恣意的な非開示処分に一定の歯止めになることに期待したい。

 ご支援いただいた読者各位に厚くお礼申し上げる。

■関連記事 https://miyakekatuhisa.com/archives/1587

■判決文 東京地裁・ 令和3年(ヮ)26199号 国家賠償請求事件(国賠法上の違法を述べた箇所は13頁付近)

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情報公開 研究不正 研究倫理 著作権問題

岩手大学のレポジトリ論文”こっそり削除”は国際ルール違反

 岩手大学教育学部菊地洋准教授の研究不正問題で、大学の論文削除方法が国際ルールに違反していることが発覚した。

 菊地教授は〈新型コロナ感染予防のための「自粛」と国民の権利―憲法学の視点からの検討―〉と題する論文を岩手大学の紀要(論文誌)である『岩手大学文化論叢』の2021年2月発行第10輯(しゅう)に発表、論文は同大学のレポジトリ(岩手大学がインターネット上で公開している論文データベース)を通じて一般に公表された。

 ところが、共同通信配信記事の一部と酷似した部分が発覚、同社からの指摘を受けて、今年2月、菊地准教授の意向によりレポジトリから削除された。現在はリンク切れになっており、論文の内容を見ることはできない。なぜそうなっているかもわからない。

 学術論文をインターネット上で共有する際の国際ルールに、説明なく論文を削除してはならないというものがある。そのひとつがDOI(ディーオーアイ)と呼ばれる仕組みだ。論文に世界共通の符号をつけることで論文が行方不明になることを防いでいる。

 岩手大学のレポジトリもこのDOIを採用しており、問題の菊地論文には「10.15113/00015326」というDOIの符号がついている。

 そして、日本国内でDOIシステムの運用に担うJLC(ジャパンリンクセンター)は、論文を削除する際の手順としてこう説明している。

・登録したDOIを削除することは出来ません。
 DOI登録したコンテンツ公開を取り下げることは起こりえると思います。
 公開を取り下げた場合でも、DOI のランディングページは維持してメタデータの公開を継続し、アクセスが保証されるようにします。
 ランディングページには、コンテンツ公開を取り下げた事実、理由を明記します。もしランディングページのURLが現在のDOI登録と異なる場合は、JaLCでURLの更新・登録処理を行ってください。

 いったんDOIの符号をつけて論文公表した以上、論文を取り下げる場合でも、取り下げの理由説明をつけてメタデータ(現データ)が閲覧できるようにしなければならない。つまり、この論文はこういう理由で取り下げられたのだと閲覧者がわかるようにせよというのがルールなのだ。

 菊地順教授の論文の場合、岩手大学(レポジトリの責任者は図書館長)は、こっそりこれを削除した。いわゆるリンク切れである。これはDOI運用違反ではないのだろうか。

 現在、大学に見解を質しているところだ。

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印影不開示問題 情報公開

選挙運動費用収支報告書の印影非開示めぐる審査請求
8月2日に口頭意見陳述

 選挙運動費用収支報告書に記載された出納責任者の誓約署名の押印を高知県選管が非開示処分にしたのは違法・不当だとして処分取り消しを求めた審査請求の口頭意見陳述が、8月2日に高知市である。

 選管運動費用収支報告書の印影をめぐっては、板橋区選管の非開示処分に異議申し立てしたのがきっかけで現在東京23区すべてで開示している。

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情報公開 行政腐敗

岡山県警察「求人票」黒塗り問題
 「法人名は開示妥当」と公安委裁決

 岡山県警退職者の再就職先が記載されている「求人票」の企業などの法人名を情報公開で不開示にしたことの違法性などを問う審査請求に対して、審査を行っていた岡山県公安委員会は6月23日、法人名・事業内容などは開示するのが妥当だとする裁決を行った。

 求人票に記載された法人名は、警視庁や埼玉県警は開示している一方、神奈川県警や岡山県警は不開示処分をしていた。神奈川県警については取り消しを求める行政・国賠訴訟が横浜地裁で進行中で、不開示は適法との主張を神奈県は維持している。

 

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情報公開 横浜市 神奈川県警 行政腐敗

神奈川県警の「天下り黒塗りリスト」を暴け――訴訟
請求の拡張申し立て

 神奈川県警職員の再就職先が記載されているとみられる「求人票」、いわゆる天下りリストが完全黒塗りにされているのは違法だとして取り消しを求める訴訟を、筆者は現在本人訴訟で行っている。来月7月11日の弁論準備手続きを前にして、きょう請求の拡張申し立てを行った(投函)。

 県警は非開示決定をする際に、すくなくとも13件の求人票について非開示理由の通知をしていなかったことが訴訟手続のなかで判明しており、これらの通知漏れ文書に対する取り消し請求と国賠法にもとづく賠償請求(理由の付記義務違反)を追加した。

 引き続き御支援をお願いする次第である。

 ■請求の拡張申立書

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情報公開 杉並区 行政腐敗

杉並「阿佐谷区民センター”汚職”事件」 奥山妙子区議に聞く(1)

 杉並区長選挙と区議補欠選挙が告示され、19日に投票がある。政治に失望し、あるいは関心を失い、投票に行かない有権者が多数いるかもしれないが、それはすなわち行政の腐敗を放置し、悪化させることに直結する。20年近く杉並区政を観察してきた筆者の実感である。

 気になりながら多忙にかまけてよく勉強してこなかった事件がある。「阿佐谷区民センター”汚職”事件」である。

 新築されたばかりの阿佐谷区民センター(2022年4月から運営開始)の指定管理者の選定作業中だった昨年7月、こともあろうに応募していた業者と区長、選定にかかわる幹部職員が軽井沢に泊りがけで行って飲食を伴う会合を開き、一部職員はともにゴルフを行った。そして、この業者は区民センターの指定業者に選定され、契約を締結したという事件だ。

 あきれたことには区長や職員の「”汚職”出張」には税金がふんだんに使われたという。

 以上の簡単な経緯をみただけでも強烈な腐臭がしてくる。広い意味での「汚職」と断言してよいだろう。

 これをよしとしない区民有志がたちあがり、指定管理契約の無効や汚職出張にかかった公費の返還を求めて住民訴訟を起こしたと聞き、筆者もおそまきながら勉強を開始した。

 まず裁判の内容にも詳しく、区議会議員として問題の追及を続けている奥山妙子議員に事件の内容を聞いた。その内容を何回かにわけて掲載する。

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 奥山妙子議員に聞く「阿佐谷区民センター”汚職”事件」(1)

――どういう事件ですか。

(奥山)去年、2021年7月14日に田中良杉並区長と職員4人が群馬県の軽井沢に行ったんですね。総勢5人。

 田中区長
 浅川祐司秘書課長
 徳嵩淳一区民生活部長
 武田護産業振興センター所長
 海津康徳産業振興センター事業担当課長

 日程

7月14日
 区長・浅川秘書課長=公用車
 徳嵩部長、武田所長、海津課長=新幹線
 以上4人は宿泊

 会議が5時半終了、会食(飲酒あり)

 浅川課長は公用車で日帰り

7月15日
 区長・武田所長は新幹線で帰る
 徳嵩部長、海津課長はゴルフしたのち、新幹線で帰る 

(奥山) 同年9月14日の区議会一般質問で山田耕平議員(共産)がただしました。新聞報道もされました。そのときに問題になったのは、「出張」した時期は緊急事態宣言中だった点です。しかし問題はそれにとどまりません。

 この初日の「会議」の主催者は東京商工会議所杉並支部でした。幹部会議と称してコロナ問題とか杉並区の経済、区政、予算要望がだされた。職員が東商の話を聞く。そういう内容だった。会議は午後5時前に終わった。

 会議終了後夕食があった。区長は「少しは酒をたしなんだ」と総務部長が答弁しています。その後浅川秘書課長は公用車で東京に帰った。午後8時半に杉並到着しています。つまり、日帰りできた証拠です。ほかの4人は泊まった。翌15日、区長と武田所長は新幹線で帰り、残った2人(徳嵩、海津)は商工会議所の人たちとゴルフをした。

 ――初日は会食。15日は職員2人(徳嵩、海津)がゴルフ。

(奥山) 重要なのはこれからで、主催者である東京商工会議所杉並支部の会長は「箱根植木」という会社の社長です。折しも、新築中(当時)の阿佐谷区民センタ―の指定管理者の募集中で、箱根植木は応募業者のひとつでした。そして、7月14日はまさに第1回の選定委員会の日だったのです。おまけに徳嵩部長は阿佐谷区民センターの所管部署のトップであると同時に指定管理者選定委員会の選定委員だった。

 徳嵩部長は、7月14日の選定委員会を欠席して軽井沢に行ったということです。この日の選定委員会は応募業者の評価をする作業がなされています。徳武部長によれば、「東商の会議のほうが重要ですから」として、評価点を事前に入れておいたうえで委員会を休んだと説明しています。

その2

 

 

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情報公開 行政腐敗

情報公開手数料納付問題
群馬県はなお「現金納付」と判明

 情報公開請求によって開示された文書を郵送で受け取る際の手数料を一部自治体が「現金書留」など高額の費用がかかる方法に限定、利用者に負担が生じている問題で、関東地方の都道府県のうち神奈川県のほか群馬県も「現金納付」に限るとの運用をしていることがわかった。

 筆者は従来、納入通知書を発行せず現金のみという運用をしている都道府県は、関東地方では神奈川県のみだと認識していたが、これは取材不足による誤りであった。この場を借りてお詫びしたい。

 関東地方の都道府県で納入通知書を発行していないのは神奈川県と群馬県――というのが正確である。

 文書を郵送で受け取るための手数料の納付が、なぜ納入通知ではなく現金なのか、群馬県の情報公開事務を担う「生活こども部県民活動支援広聴課」に電話取材を行った。追って回答するとのことである。

 一方、神奈川県が情報公開における納入通知書の取り扱いについて検討をはじめていたことがわかった。情報公開担当部署の職員によれば、昨年末ごろ全国知事会の場で各都道府県に対する調査を実施した。それによれば、およそ半数の自治体で納入通知書やそれに準じるペイイージー(コンビニでの支払可)を取り扱っていることが判明したという。

 しかし、なおも「検討」を続けているとのことで、実現するかどうかは明答できない模様だ。筆者が指摘をはじめてからざっと2年、組織の動きの鈍さに愕然とするが、それはそのまま市民・住民の知る権利が軽んじられていることを意味する。