杉並区の情報公開事務で、決定通知書には「全部開示した」と記載しながら、じっさいに「開示」した文書には白塗りによって一部を隠すという、いわゆる「白塗り」問題をめぐる国賠訴訟2件の判決が、11月30日(第1事件)、12月3日(第2事件)、それぞれ東京地裁で言い渡された。国賠法1条1項にもとづく賠償請求に対してはいずれも棄却したが、判決理由では多くの収穫があった。一部勝訴といってもいいと思う内容である。
まず第1事件では、区選管が文書(選挙運動費用収支報告書)の一部(出納責任者の印影の一部)を白塗りしたのは情報公開条例など法令にもとづかない行為であり、違法であると認定した。また、審査請求を約4年も放置したことは、社会通念に照らして明らかに不当であるとも認定した。
第2事件のほうは、区長が文書(区職員の決済文書)の 一部(職員の決済印の一部)を白塗りしたのは情報公開条例にもとづく非開示処分であり、その理由を通知しなかったのは条例が定める理由の通知義務に違反すると認定した。
そのうえで国賠法1条1項による賠償をするほどの損害はなかったと結論づけた。
条例にもとづかない非開示行為について、「処分ではない違法行為」「処分であり、理由通知義務違反」という2つの判断にわかれた。筆者の印象では、後者の判断が正しいように思う。前者の訴訟について控訴する方針である。
読者各位のご意見をお待ちしている。
●杉並区「白塗り」事件1 判決(7~9頁参照)
● 杉並区「白塗り」事件2 判決 (7頁参照)