「支払能力があるにもかかわらず著しく返還を怠った」場合に限って、分割弁済のうちの返還期限がまだきていない金額までさかのぼって一括で請求できる――それが日本学生支援機構の学生ローン(商品名「奨学金ローン」)の本来の仕組みである。日本学生支援機構施行令5条5項で明確に規定している。ところが、支援機構はこの規定を無視して、金がなくて払えなくなった利用者に対して容赦なく一括請求を行っている。支払能力の審査はしていないが、一定期間連絡がなく返還猶予の申請もしない者は支払能力があると認識せざるを得ない、などと意味不明の詭弁を弄して違法な貸し剥がしを強行している。
いったいどのような法令解釈をしているのか。筆者が支援機構に対して「一括請求に関するいっさいの文書」という情報公開請求を行ったところ、出てきたのが下記の文書「法的処理実施計画」だ。項目以外はすべて黒塗りされている。
支援機構の暴走を知るなんらかの手がかりがあるのはまちがいない。さっそく黒塗りの開示をもとめて審査請求を行った。

独立行政法人日本学生支援機構御中 2021年6月28日 審査請求人 三宅勝久 審査請求書 次のとおり審査請求をする。 1 審査請求にかかる処分の内容 独立行政法人日本学生支援機構が審査請求人に対して、2021年6月9日付で行った法人文書部分開示決定(学支広第28号)。 2 審査請求にかかる処分を知った日 2021年6月11日 3 審査請求の趣旨 非開示部分をすべて開示せよ 4 審査請求の理由 実施機関(日本学生支援機構)は、審査請求人による下記請求内容、 〈「法的処理実施計画」と題する文書。請求日(2021年5月14日)現在で現存するものすべて〉 に対して、次の文書を特定し、項目部分を除く本文すべてを非開示とする部分公開決定を行った。 1 「平成30年度法的処理実施計画」 2 「令和元年(平成31年)度法的処理実施計画」 3 「令和2年度法的処理実施計画」 4 「令和3年度法的処理実施計画」 不開示理由として通知書には、法第5条第4項二に該当する旨の記載があった。 実施機関である日本学生支援機構は、日本学生支援機構法に基づいて奨学金事業を行う独立行政法人であり、営利を目的とした団体ではない。そして、各対象文書には、返還が困難になった債権の回収計画について記載されていると推認されるところ、その内容を明らかにしても失われる利益はない。むしろ、債権回収にあたって法令遵守がなされているかどうかを知りうる情報であり、高い公益性がある。 よって、本件不開示決定は違法または不当であり、すべて開示すべきである。 5 実施機関による教示の有無 この決定に不服がある場合には、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の規定により、この決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、日本学生支援機構に対して審査請求をすることができます」との教示があった。 以上