鹿児島県に県政記者クラブ「青潮会」というものがある。新聞やテレビ、通信社でつくる任意団体だが、それらの企業関係者以外は参加を認めない排他的な組織運営をしている。この排他的任意団体にすぎない青潮会が、鹿児島県庁のなかの広々とした部屋を専有し、さらに知事の記者会見まで独占している。私のようなフリー記者が知事記者会見を取材するには、「青潮会」に対して過去書いた記事を提出して許可を乞わなければならない。とても「ジャーナリズム」とはいい難い理不尽きわまりないことがまかりとおっている。もっとも、これは鹿児島だけの話ではなく、日本中を覆う権力構造の一部と言ってよい悪しき情報操作のシステムである。
この青潮会と鹿児島県の癒着を象徴するものに「懇談会」がある。県の幹部と飲み食いして親睦を深めるーー要は持ちつ持たれつの馴れ合い関係を確かめる催しだ。この「懇談会」の実態を調べようと筆者は今年1月、県広報課に対して質問した。
「懇親会の日時場所を教えてほしい」
広報課のMという男性職員は次のように答えた。
「わかりません」
驚いた筆者は問いただした。
「そんなはずはない。会を開催する際に文書を作っているはずだ。文書があるだろう」
これに対する返事に、筆者はさらに驚いた。
「ああ、案内文書はあったと思う。しかし1年以内廃棄なのですでに廃棄した。文書がないので(日付も場所も)わからない」
嘘をついている。口からでまかせを言ってごまかしている――そう確信した筆者は、1月半ば、懇談会に関するあらゆる文書の開示を求める情報公開請求を行った。2週間後に届いた結果は「不存在」。電話でM広報課員が言ったとおり、「廃棄済み」というのが理由だった。
にわかに信用できないと考えた筆者は、不服審査請求を行うと同時に、「懇談会の日時場所、会の名称がわかる文書」の開示請求を行った。この結果もやはり「不存在」であったので、同様に不服審査請求をした。
この一連のやりとりからおよそ半年が過ぎた6月14日、鹿児島県から大型封筒が届いた。会の内容がわかる文書が見つかったので、従来不存在としてきた情報公開の内容を変更するという趣旨が書かれた文書が入っていた。
「広報課行事予定表」。それが懇親会について記載された文書だという。写しの交付手続きをして入手した予定表にはこんな記載があった。
「(2019年5月)31日金 19:00〜21:00 サンロイヤルH 青潮会と県幹部との懇談会」

広報課の予定表に記載されているのにもかかわらず、広報課のM職員は「文書がないので(日付も場所も)覚えていない」と説明した。情報公開請求をしてもなお、不存在であると虚偽の対応をした。予定表は広報課で作るものだし、課員が日常業務のなかで見ないはずがない。そこに「懇談会」の記載があることを知りながら嘘をついていたのだろう。その程度でごまかせると思っていたとすれば、あまりにも世の中をバカにしている。
予定表以外の文書、たとえばホテルへの支払い関係などの文書も、じつは存在しているのではないかと筆者は疑っている。息を吐くように嘘をつく鹿児島県職員の姿勢には、いうべき言葉がみつからないが、それにしても、なぜそこまでして「懇談会」を隠したいのか、奇妙である。なにか不都合な事情があるのかもしれない。