条例にもとづく情報公開請求を杉並区選挙管理委員会にしたところ、印影の一部を白塗りにした文書を出してきて「全部開示した」と説明した。白塗りは非開示処分だとして撤回を求める不服審査請求をすると、じつに3年11ヵ月もの長期にわたっていっさい手続きをとらずに「放置」した。杉並区選管のこの情報公開事務の違法性を問う国家賠償請求訴訟を筆者は起こしているが、このほど、被告区側の反論内容がはじめて判明した。
原告側に届いた「被告準備書面1」(24日の第2回口頭弁論で陳述予定)によれば、被告杉並区の主張はおよそ以下のとおりである。
(1)白塗りではなく「白い線を引く偽造防止の加工」である。よって非開示処分ではない。非開示処分ではないので白塗り(加工)の理由を説明する義務もない。
(2)偽造防止の加工をしたのは情報公開の実施機関である選管ではなく、補助事務を担う情報公開担当職員である。よって選管職員には責任はない。
(3)不服審査が長引いているのは業務が多忙であるからであり、その点は原告に説明している。審査の期間は法律などで定められているわけではなく、国賠法上の違法はない。
――
選管は対象文書をすべて開示したのであって、一部非公開処分にはあたらないという主張である。そして不服審査に4年近くかかっているのも、多忙ゆえにやむを得なかったのであるから、違法性はないということらしい。
これをみて、筆者が感じた疑問を覚書として以下に記す。
・白塗りではなく白線による加工だという主張について。
印影に塗られた「白線」の幅は4ミリから5ミリもある。しかも印影の中央にひかれていて文字を隠している。これが単なる偽造防止の「加工」だろうか。文字を消しているのだから「白塗り」が正しいだろう。
・白塗り(被告の表現でいえば加工)を行ったのは選管でなく情報公開担当の職員であり、選管職員には責任がないという主張について。
区の各種規程によれば、情報公開担当職員に課せられた業務は補助事務であって、公開非公開の決定に関与することはできない。開示決定をした文書の一部を白であれ黒であれ、隠す権限があるとはとても思えない。どんな権限で「加工」をしたのかについてはいっさい主張がなかった。
・白塗り(加工)は非公開処分ではなく、説明義務もないとの主張について
この言い分が通用するのであれば、公文書のあちこちを好き放題に白塗りできてしまう。情報公開制度の根幹をゆるがしかねない。選管も承知のうえで白塗りにし、原告からの抗議を受けたのちもそれを変えなかったのだから、選管による非開示処分である。
・不服審査の長期間放置が「多忙」ゆえとの主張について
いかに多忙だとしても4年近くも放置することが正当化されるのか、きわめて疑わしい。問題の審査請求を申し立てたのは2017年7月だが、同年度の情報公開関連の不服審査申し立て件数は9件にすぎない。これを処理できないのは、業務の態勢そのものに問題があったか、または意図的に先送りしたか。そうとでも考えざるを得ない。
情報公開白塗りと審査請求長期間放置をめぐる国賠訴訟の第2回口頭弁論は、6月24日午前11時から東京地裁630号法廷で開かれる。