杉並区選挙管理委員会が、情報公開の審査請求を受けながら3年8ヵ月以上もの間、手続きを進めず事実上放置している問題で、請求人である筆者は11日、「迅速に不服申立て審査を受ける権利を侵害された」として、区を相手どり、国家賠償法にもとづく10万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。令和3年(ワ)6051号 民事28部
筆者は2017年5月、区選管に対して、2015年4月に執行された区議会議員選挙の立候補者数人に関する選挙運動費用収支報告書の写しの交付を求める情報公開請求を行った。選管は会計責任者の印影部分に「白色で」斜線を引く加工をして「開示」した。そして、可否決定通知書にはすべて開示した旨の記載をした。
白塗りは事実上の非開示処分であり、開示されるべき情報であると考えた筆者は、2017年7月5日、行政不服審査法に基づき、印影の開示を求める審査請求を、審査庁である杉並区選管に行った。
区情報公開条例には、審査請求があった場合、審査庁は「遅滞なく」杉並区情報公開・個人情報保護審査会に諮問(意見を聞くこと)し、その答申を得て採決をするよう定めている。
他の自治体の例でみれば、神奈川県は1ヵ月以内に実施機関(非開示処分をした機関)の弁明書を提出させ、審査請求人の反論書を待って、2〜3カ月以内には審査会に諮問した。板橋区は、昨年12月2日の審査請求に対して、同様の手続きを経て2月26日に審査会に諮問した。これらに対して杉並区は3年8ヵ月以上がすぎた現在もなお、実施機関である選管の弁明書すら出てきていない。意図的に放置し、時間を稼いでいるのではないかと疑わざるを得ない。
情報公開に関する審査請求の手続きの遅れを争点とした裁判は、渋谷区教育委員会に関するものがある。(判例時報2170号33号) これは審査請求から10ヵ月〜1年2ヵ月過ぎて行った諮問は、迅速な処理を義務づけた法令・条例に反して遅すぎるとして賠償を求めた原告に対して、一審は損害賠償を認めたが、控訴審で逆転敗訴した事件だ。控訴審の判決は、原告は審査請求と並行して非開示処分の取り消し訴訟を行っており、最終的な情報公開の処分(結果的に変更なしで決着)に至るまでの時間を全体としてみれば遅滞したとは言えない、といった判断だ。まったく手続きを進めていない杉並区の例とはかなり事情がちがうように思う。
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