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大内裕和・武蔵大教授に対する調査の焦点――「三宅執筆『選択』記事は読んでいない」の真偽判定いかに

 

 大内裕和・武蔵大学国際教養学部教授の研究不正問題で、調査委がどのような結果を出すか関心をもっているのが、私が2012年に発表した雑誌『選択』記事を大内氏が「読んでいない」と主張している問題だ。盗用発覚からの経緯を振り返れば、大内氏はこの「読んでいない」という、どうみても苦しい言い分を強引に貫くことに最大の努力を払ってきたようにみえる。 

 時系列に振り返る。★は当時、私が知らなかった事実である。


(2020年)
 ・7月21日 『奨学金が日本を滅ぼす』(2017年刊行、大内氏著)の盗用疑惑について筆者が大内氏に質問状を出す。盗用元は大内氏との共著『日本の奨学金はこれでいいのか!』第2章(三宅執筆)。
 ・7月 『奨学金が日本を滅ぼす』の盗用疑惑について中京大に告発(告発1)、予備調査開始。
 ・9月14日 大内氏が三宅に回答。「盗用・剽窃ではない。私が以前に発表したものである」(趣旨)
 ・9月17日 「私が以前に発表した」と説明する記事などが、じつは『選択』記事(三宅著)からの盗用だったことを発見、中京大に追加の告発を行う(告発2)。
 ★9月23日、告発1に関して大内氏が中京大予備調査委に意見書提出。「私が以前に発表したものである」
 ・10月23日、三宅→大内に通知書。『選択』記事からの盗用を指摘。
 ★10月13日、告発2に関して大内氏が中京大予備調査委に意見書。「『選択』記事は読んだことがない」
 ・11月、中京大予備調査委、「本調査不要」と結論。
 ・12月末、大内氏側から三宅側に和解案。『日本を滅ぼす』『これでいいのか』大内氏執筆部分について、類似表現があったことを謝罪、訂正(または絶版)、和解金支払の用意あるとの内容。ただし三宅が批判記事削除、解決したことを公表することが条件。著作権侵害は認めない。交渉は終始、大内氏が『選択』記事を読んでいることを前提にして進められた。
(2021年)
 ・3月 大内氏側、和解案を文書で提示。
 ・3月 三宅側は、違法性を認めた上で無条件の謝罪・訂正を求める。大内側がこれを拒否。交渉決裂。
 ・4月、三宅、提訴。
 ・8月、大内側、「「選択」記事は読んだことがない」との主張を三宅側にはじめて示す。中京大に提出した意見書を法廷で開示。

(データはすべて自分で集めたとの説明。多くは三宅の取材方法と異なる。大学の調査には示さなかったデータも裁判で出てくる。三宅の誤記「銀行からの貸付残高」=正しくは「銀行の貸付残高」と同じ誤りがある点については「そもそも誤記ではない」

と釈明)。

(2022年)

 ・2月 著作権侵害訴訟で三宅敗訴(「著作権法上の著作物ではない」との判断)。

 ・4月 大内氏が武蔵大学に移籍。

 ・9月 三宅、同大に研究不正で告発。武蔵大予備調査委が本調査開始決定。

 ・11月 三宅 『選択』記事中、「1兆円」のデータに誤りがあったことを発見。大内氏の記事・著作にも「1兆円」との数字があるが、それが何にもとづいた記述かはこれまで説明がなかった。「『選択』記事は読んでいない」という説明の信用性ゆらぐ。

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 『選択』記事は無署名記事だったので、大内氏はまさか私が書いたとは思ってもいなかったのだろう。うかつにも『奨学金が日本を滅ぼす』の盗用疑惑について中京大予備調査委に、「盗用・剽窃ではない。私が以前に発表したものである」と嘘の説明を行い、ご丁寧に『選択』からのパクリ部分を含んだ自分の記事を多数提示してしまった。

 「きわめて類似した表現があることを重く受け止め・・」(弁護士の通知より)と非を認める見解もみせていた。ところが『選択』記事が私の執筆だったために簡単に見破られ、追加の告発を受けるはめになった。ふつうはここで観念するところだ。だが、大内氏は万事休すとばかり強行突破を試みる。「読んでいない」とシラを切り続け、処分を免れようとした。示談交渉で一時みせていた殊勝な姿勢も、真意は研究不正処分を免れるためだったのではないか。

 「三宅とは和解した」という既成事実を作るという目録見がはずれて訴訟になると、態度を一変させ、恥も外聞もなく「『選択』記事は読んでいない」と言い出した。大学向けに使った詭弁である。示談交渉で言っていたこととの矛盾については「早期解決のため」などとごまかした。そして裁判を首尾よく切り抜けた。奨学金問題対策会議の弁護士や学者らが大内氏を徹底して擁護した。

 本人は逃げ切ったつもりでいたのかもしれない。しかし、私には、嘘をつくことで傷口を広げているように見えてならない。はたして武蔵大がどんな結論を出すのか、楽しみである。  

 

作成者: MIYAKE.K

みやけかつひさ ジャーナリスト・スギナミジャーナル主宰者

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