神奈川県警職員の天下り先が記載された「求人票」(天下りリスト)の法人名を黒塗りにしたことによって精神的苦痛を受けたとして、県に慰謝料10万円の支払いを求めた国賠訴訟(黒塗り部分は訴訟中に県が開示)で、横浜地裁(岡田伸太裁判長)は3月22日、「仮に国賠法上違法だとしても金銭をもって賠償するほどの損害はない」などとして、原告(筆者)の請求を棄却する判決を言い渡した。
一般的に、情報公開手続きの誤りをめぐる国賠訴訟では、
(1)黒塗り処分が情報公開条例に照らして妥当だったかどうか、
(2)妥当でなかった場合、その処分を行った公務員の行為が国賠法1条1項に照らして違法かどうか、
さらに、
(3)国賠法上違法だった場合、金銭をもって賠償する程度の損害があったかどうか、
――といった点についてそれぞれ判断を行い、判決理由に記載される。ところが岡田裁判長の判決には、いずれの点についても明確な判断がなされていない。原告(筆者)が開示を求めていた黒塗り部分は、裁判中に被告(神奈川県)によって開示された。だから損害はない。あったとしても回復された、はい終わり、というわけなのだ。
そもそも神奈川県警察が黒塗りを撤回したきっかけは、裁判の途中で裁判官が「任意で開示することを検討してほしい」と助言したことにある。このまま争えば県は敗訴しますよ――と”回答”示唆したわけだ。敗訴の回避に裁判所が力を貸したとも言える。
裁判を起こさなければ間違った情報公開の黒塗りは是正されなかった。それにもかかわらず、県の責任はまったく不問にされ、金と労力と時間をかけて訴えた側は「請求棄却」の一言で報いられる。
司法がこんな体たらくだから、行政のデタラメが放置され、増長するのだろう。
むろん、判決を不服として東京高裁に控訴した。引き続き応援をお願いする次第である。