正月に「おめでとう」ということに私はどことなく戸惑いを感じて、もう何年もこの挨拶をしていません。決しておめでたい気持ちの人ばかりではないでしょうから、なにか無神経な気がするのです。
家族や親しい人が亡くなったり、病気や怪我、経済的その他の困難に見舞われている方が大勢いることでしょう。戦争や災害、貧困、暴力、その他あらゆる不条理にさらされて苦しんでいる方も大勢いることでしょう。年末年始というのは差別や悲しみを普段よりいっそう浮き彫りにする時期でもあると思います。
そこで、私は年賀状(筆無精でもともとあまり出さないのですが)のかわりに寒中お見舞いを出すことにしています。出しきれない方は、ブログやメール、たまに出す著書を、勝手にご挨拶がわりにしているつもりです。ご容赦ください。
さて、昨年末に拙著『絶望の自衛隊 人間破壊の現場から』を上梓しました。ふつうの善良な市民が殺人鬼となり、またふつうのおだやかな暮らしに戻るという狂気を、日本という社会はついこのあいだ経験したはずですが、また同じことがくりかえされようとしているのではないか。取材を通じてそんな気がしてなりません。
戦争前夜のいま、ひとりでも多くの方に読んでほしいと思います。本年もひきつづきよろしくお願いいたします。