日本学生支援機構の法令不遵守ぶりを象徴する行為のひとつが「支払能力」不問の繰り上げ一括請求(期限の利益喪失、いわゆる貸し剥がし)だ。日本学生支援機構法施行令5条5項、または日本育英会法施行令6条3項は、分割払いを繰り上げて一括請求できる場合として、次のように定めている。
〈 学資貸与金の貸与を受けた者が、支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、前各項の規定にかかわらず、その者は、機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返還しなければならない。〉
お金がなくて延滞した人に対しては貸し剥がしをしてはいけない。与信なし、金銭的余裕のない人に貸し付ける、学問の機会均等のため、という奨学金ローンの性質を考えれば当然の規定である。
ところが、支援機構はこの「支払能力」条項を、長期間延滞し、連絡もない、返還猶予手続きもしない者は支払能力があると認めざるを得ない――といった強引に解釈し、支払能力の審査なしで容赦なく一括請求をやっている。この問題は、現在、雑誌『週刊金曜日』で「日の丸ヤミ金奨学金」と題して連載中である。ぜひお読みいただきたい。
この問題について、きょう、あらたな事実が判明した。支払能力を調べずに一括請求をしたことの是非が問われた訴訟で、施行令違反にあたり無効だとの判決が函館地裁で出されていたのだ。
日本学生支援機構に対する情報公開請求で明らかになった。事件番号や判決日は「個人情報」を理由にして黒塗りにされている。この判決は広く知られるべきだと考え、本ブログで公開する。