健康食品メーカーDHCを批判する記事をブログに書いたところ名誉毀損だとして6000万円の損害賠償を求める訴訟を起こされた弁護士の澤藤統一郎氏が、反撃して勝訴し、さらに提訴自体が違法だとし訴えてそちらも勝訴するまでの体験を綴った著書を出版した。
『DHCスラップ訴訟ースラップされた弁護士の反撃そして全面勝利』(日本評論社、本体1700円)である。

私も2003年に、サラ金大手「武富士」を批判した雑誌『週刊金曜日』の連載記事に対して同社から1億1000万円の損害賠償請求訴訟を起こされ、苦労の末に勝った。多大な労力がかかり、精神的にも辛かった経験だが、貴重な教訓を得ることができた。
いまの日本には、真の意味での言論の自由など存在しないということである。
名誉毀損のルーツをたどると讒謗律にいきつく。明治政府が批判的な言論を弾圧するために太政官布告という方法で作った法律である。本当のことであっても誰かを批判すれば名誉毀損にあたる。批判することは悪いことだ、犯罪であるというのが、讒謗律の基本的な考え方である。
一方、いまの名誉毀損はどうか。批判することすなわち名誉毀損である。ただし公益性、真実性、真実相当性があれば免責される。立証は訴えられた側がやらねばならない。こういう仕組みになっている。立証責任が被告に課せられているため、訴えられると負担がきわめて大きい。「批判することは悪いことだ」という讒謗律の本質をしっかりと受け継いでいる。
言い換えれば、名誉毀損訴訟制度を利用した言論弾圧(訴訟テロ、スラップ訴訟などと呼ばれる)との戦いは、言論の自由獲得の局地戦のようなものだと私は思う。