昨年11月13日、筆者は雑誌『世界』の投書欄「読者談話室」に以下の投書をした。2か月が過ぎたきょう現在、編集部から連絡はない。不採用の可能性が高いと考えて、本ブログに掲載する。
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〈大内裕和中京大学教授に「奨学金」問題を語る資格があるのか〉
三宅勝久(2021年11月13日)
本誌12月号掲載の大内裕和中京大学教授による記事「すべての学生への普遍的支援へ」を読み、大内教授に奨学金問題を語る資格があるのかと複雑な思いにかられた。
大内教授は、市民団体「奨学金問題対策全国会議」の共同代表を務めるなど、奨学金問題の専門家として知られる。しかし、大内氏が発表した奨学金問題に関する著作には、他人の著作とよく似た部分が多々あり、その研究姿勢に疑問を抱かざるを得ない。
たとえば、『日本の奨学金はこれでいいのか!』(共著、2013年10月発行)第1章の大内教授執筆部分をみると、その一部が雑誌『選択』2012年4月号掲載の記事「奨学金『取り立て』ビジネスの残酷」(三宅勝久執筆)と酷似している。
「原資の確保であれば元本の回収がないより重要だ。ところが、日本育英会から独立行政法人に移行した04年以降、回収金はまぜ延滞金と利息に充当するという方針を頑なに実行している。」(『選択』記事)
「原資の確保を優先するのであれば、元本の回収がなにより重要なはずです。ところが日本学生支援機構は2004年以降、回収金はまず延滞金と利息に充当する方針を続けています。」(大内教授の記述)
同様の類似は、雑誌『現代思想』『人間と教育』『ヒューマンライツ』『Journalism』『貧困研究』などの雑誌記事にもみられる。
また、大内教授が2017年に発行した著書『奨学金が日本を滅ぼす』の一部には、前掲書『日本の奨学金はこれでいいのか!』第2章(三宅執筆)の一部とよく似た記述がある。
仮に学生が同様のことを行えば、まちがいなく研究倫理違反の疑いをもたれるだろう。しかし、上に述べた「類似した記述」について、大内教授は、現在のところ公に対してなんら説明を行っていない。「奨学金」について語る前にすべきことがあるのではないか。
(東京都・56歳・ジャーナリスト)