横浜市幹部と「横浜市政記者会」(特定メディア業者でつくる任意団体)の構成員らが頻繁に宴会を開いていた問題で(下記の関連記事をご参照ください)、山中竹春市長の職員監督能力に強い疑問を抱かせる事実が発覚した。
山中市長は現在、会食問題について、関係者からヒアリングをするなどの調査を行っているが、その前提となる横浜市利害関係者との接触に関する指針(コンプライアンス指針)の内容を大きく誤解していることが2月10日の記者会見で露呈したのだ。
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――1月23日(注1月13日の誤り)の私の質問に対して、会食の件、公務ですかと聞いたときに、プライベートだと思うという趣旨のことを答えられたと思う。それは、今でもお考えは、まちがいないのか。「完全なプライベート」。
山中 はい。職務、公務ではないと思います。
ーーそうすると、私も当時不勉強だったが、コンプライアンス指針を読むと、利害関係者との会食は禁止ということになっているんじゃないでしょうか。で、例外として、この場合は認めると。そのなかに、職務上の、職務に関連する会食とかが認められるんだと。ただプライベートであれば認めちゃいけないんじゃないか。逆に言うと、今回コンプライアンスで認めているということは、職務上の行為、指針でいう職務上の行為にあたるから認める、また会費が妥当であるからということで認めたという趣旨ではないか。そうすると前回の説明は訂正する必要があるのではないか。
山中 まず、利害関係者かどうかというと、これは利害関係者ではございません。利害関係者ではないという判断になっております。また会食は公務ではなく、公務ではございませんので、公務にはあたらないと判断されております。ただし、職員としましては、職務の公正さに対する市民の信頼を損なわない範囲かどうかを常に照らし合わせてよりいっそう慎重な行動を徹底する必要があるとの判断から、コンプライアンス委員会のほうにはかったということだったと聞いております。
――いまの…指針を読むと意味がよくわからないのだが、利害関係者との会食は禁止されている。だから届出をして、例外規程にあたるから認めたと、そういう手続きじゃないんですか。佐藤さん(報道担当部長)ちゃんと答えてください。ご自身も参加されているんだから。
佐藤 指針でいきますと、利害関係者との会食は禁止されていると。ただし禁止行為の例外がある。例外のなかで、自己の飲食の費用を負担して職務に関連して出席するもの、今回は職務に関連して出席するものということで、会食をともにするということはこの例外規程として認められている、ということで我々は申請を出しまして、今回コンプライアンス委員会のなかで、認めてもらった上で参加したということです。
ーーはい。そうだと私は思うんだけども、市長は「完全なプライベート」だとおっしゃっているんで。利害関係者と会食をするのは禁止だけれども、私の理解を申しあげていますよ。利害関係者と会食をする予定があるが、指針上禁止されている、しかし例外規程にあたるので認めてほしいという申請をだして認められたと。それは職務上の行為に該当するから認められるんだと。そうするとこれはプライベートじゃないじゃないかとお尋ねしている。
山中 公務か否かという上では否のほうを先程申しあげてしまいましたが、解釈としては佐藤部長が申しあげたとおりかと。

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利害関係者との会食は原則禁止で、指針が定める「職務上の行為」であり、かつ費用を負担するのであればコンプライアンス推進員の承認によって可能である。これが制度の基本構造である。ところが山中市長は、職員はプライベートで参加したのだから問題はない、と独自の見解を繰り返した。指針を理解していない証拠である。
市長になって間がないのだから、市政について知らないことがあるのは当然である。しかし、誤っていることを知った後の態度は、到底、コンプライアンスの調査責任を負った首長のものとは思えないものだった。
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ーーそうすると職務上の行為だったという前回のご回答は訂正されるということでいいですか。完全なプライベートという感じでおっしゃった。
山中 佐藤部長から申しあげたとおりです。
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不貞腐れたような表情で視線を下方にやりながら、山中市長は聞き取りにくい早口で答えた。佐藤部長とは佐藤広穀報道担当部長のことだ。記者会との会食に参加した経験があり、市長の指示で調査を受けている職員のひとりである。調査する側と調査対象職員という関係でありながら、緊張感というものをまったく感じさせない一幕だった。

まだ聞きたいことがあったので質問を続けようとしたが、当の佐藤部長が強引に終わりを告げた。山中市長はマスクをつけると無言で足早に会見場を立ち去った。
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