武蔵大調査委にあらたな捏造疑惑/「執筆内容は全国会議の活動の前提となる考え」発言は本当か

 大内裕和教授(現武蔵大、前中京大)に盗用等の研究不正の疑いがあるとして、文科省ガイドラインに従って告発したところ、ずさんな調査しかされずに苦痛を受けたとして、武蔵大と中京大を訴えた訴訟は、控訴審にうつった。

 一審では、じっさいには公表されていないデータをあたかも公表されているかのように事実をゆがめたうえで不正ではなくしてしまうといった、常軌を逸した「不正調査の不正」の実態が浮き彫りになった(武蔵大。中京大は本調査すらせずに終了)。判決は、あまりにもひどい調査の場合は告発人の損害を認める場合もあるという枠組みを示したうえで、本件はそれにはあたらないと請求を棄却した。これを不服として控訴し、もっか控訴理由書の作成に取り組んでいる。

 その作業のなかで、調査委にあらたな「不正調査の不正」の疑いに気がついた。

 武蔵大学調査報告書の次の一節だ。

 「著作物の出版当時、告発者(三宅)及び被告発者(大内氏)は告発物の編者である「奨学金問題対策全国会議」において活動しており、著述内容に類似性がある特定の箇所について、全国会議の活動の前提となる考え方を踏まえたものだったと述べている。当該箇所について、ともに全国会議で活動していた両者の著述内容に類似性があることは、必ずしも不自然なことではないと判断した」

 

 著作物とは『日本の奨学金はこれでいいのか』という大内氏や私ほかの共著のことで2013年に出版した。1章を大内氏が書き、2章を私が担当した。この2章の一部が2017年に大内氏が出した『奨学金が日本を滅ぼす』の一部と類似し、1章の一部が、2012年に私が雑誌『選択』に書いた記事の一部と類似している。

 大内氏によれば、類似した文章を書いた際、この『選択』記事は読んだことがなかったそうだ。完全なる偶然により類似した文章ができたことになる。取材方法もまったくちがうのだから、本当だとしたらとても珍しい現象だ。

 

 たしかに、私と大内氏は一時期、ともに全国会議の会員だった。だが、「全国会議で活動していた両者の著述内容に類似性があることは、必ずしも不自然なことではない」という説明は不自然であることに気がついた。というのは、全国会議が設立されたのは2013年3月末で、私が大内氏と面識をもったのもそのころだが、『選択』の記事が出たのはその1年前の2012年3月なのだ。つまり、「ともに活動」どころか全国会議自体が存在しない。逆にいえば、全国会議より前に『選択』の記事があった。

「著述内容に類似性がある特定の箇所について、全国会議の活動の前提となる考え方を踏まえたものだったと(大内教授は)述べている」とあるが、大内氏は本当にそんな説明をしているのだろうか。裁判にだされた調査記録をつぶさにみたが、どこにもそんな発言はみあたらない。幻の公表データにつづき、この発言も調査委員会が捏造したものではないか。そう疑う余地がある。 

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